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バスにひかれた私のBLOG

復活の日

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絶対。
私は絶対、あの日のことを忘れない。
そして、忘れちゃいけない。
ある意味、あれが私のスタートでもあったのだから。

事故にあって1番強く思ったこと。
それは、大きなものを失ってしまった私ではなく
新しくスタートした私だとゆうことだ。

もう、健康な足は戻ってはこない。
過去を振り返るのはやめよう。
だけど、それまでの私があるから今の私がある。
だから、違うスタート地点に立ったのだと思えばいい。
そう、考えた。
違う足を手にいれたんだ。
人生の道を踏み外したのではなくて
新しい道ができたのだ。
そう思うことにした。

正しいのかどうかなんてわからない。
けれど、それが私の出した答えだった。
そして、その答えに結びつく、大きな大きな出来事だった。

あれは。
まだ、1日に1時間だけ。
リハビリをのぞき、1時間だけベットを降りてよい規制があった頃。
午後の検温で、看護士さんが病室へやってきた。

窓際のベットにいた私のところへは
いつも看護士さんが、最後にまわってきた。
あの日の看護士さんはくどうちゃんで、私の担当ナース。
珍しく時間に余裕があったようで、あーでもないこーでもない。
たわいもない話をしてた。

で、くどうちゃんが。
「ねえ。あげたまちゃんさ、運転はどうする?」そうきいてきた。
「もちろんするよー!!」。
私の不自由は足は、ラッキーなことに左足。
車はオートマだから、運転にはさほど問題はないのだ。

「じゃ~さ~左足はどうやって運転する~?」と、くどうちゃん。
つまり、運転に問題はないけれど。
でも、足首が90度に曲がっていないとか
うっ血するとか、だるいとか、むくむとか。
様々な問題があるけど、どんな体勢で運転するかってことだ。

「う~ん...こんな感じかな~」
そうやって、私はベットの脇にすわり
両足を床にむけて、だらんと下げた。

と、その時。

一瞬、呼吸がとまったような感覚に陥った。
足をさげたその瞬間、なんだか冷たいものが
足にスーっと流れたような。
いや、実際そんなことがあるわけはないんだけど
なんとゆうか。血管の中を、氷水が流れていったような。
どこかが軽くなったような。そんな感覚が走った。

と、同時に。

私の中に、「もしかしたら」とゆう感情がわいた。
もしかしてもしかしてもしかして。
いや、違う。あるわけない。そんなこと、絶対にあるわけがない。
けど、だけど。

多分その時間は数秒で、でも、その短い間に
いっきに色々なことを考えた。
その様子をみて、くどうちゃんが「どうしたの!?あげたまちゃん!?」と。

どうしよう。口にだすのがこわい。
もし、間違いだったら。
でも、リアルだったら。
どうしよう。くどうちゃん、どうしよう。
けれど。大きく深呼吸をして、勇気をだして声にしてみた。

「くどうちゃん.......もしかしたら.......」
「もしかしたら!?」
「今.......私の足.......」

ここまで言って、心臓がバクバクしてきた。
そして、今度は息をのみこんで、言葉にした。

「くどうちゃん........私の足、動いたかもしれない........」

くどうちゃんは、何がなんだかわからない顔をしてた。
その会話が、みんなの耳にもきこえたみたいで
病室中が静まり返ってしまった。

「あげたまちゃん、ほんとう?もう1回やってみて!!動かしてみて!!」

くどうちゃんはそう言った。だけど、動かすって言われても
なにをどうしていいのか、さっぱりわからない。
だけど、ゆっくり。
そう、ゆっくり考えながらやってみた。
まともな右足の動きを真似しながら、ゆっくりやってみた。

まず、お尻に力を入れた。
そして、膝をおさえて。
太腿の裏の筋肉に力を入れて。
そーっとそーっと、足首にむかって力をいれてみた。
私の背中に、みんなの視線がささってた。

最後に、せーのと、心で掛け声をかけた。

そして。
私の目には、もう涙しかなかった。
くどうちゃんの顔が、涙で全然見えなくなった。
そして。やっと、声を出すことができた。

「動いたよね.............?」

その瞬間、くどうちゃんの叫び声とみんなの声が
病室中に響き渡った。
その声は、今でもずっと耳に残ってる。

けれど私は、声が出なかった。
その動きは、数ミリ。
角度にしたら、角度さえ入らない動きかもしれない。
だけど、確かに。
私の足首が、私の力で動いた。
動いたんだ。

現実は受け止めた。
受け止めたうえで、必死にやろうと決めた。
もし、やってもやってもダメなら
その時にまた、考えようと思った。
歩きたい。動きたい。
そのことだけを考えて、邪念を振り払った。
たとえ動かなかったとしても
「ここまでやったんだから」と思える自分。
そこに到達できるように、朝も昼も夜も夜中も。

そして、そんな私に。
先生も、看護士さんも、リハビリも。
みんながみんな、力をかしてくれたんだ。

ダメかもしれないと、何度も何度も思った。
足が残っただけでもいいと思ってた。
だけどやっぱり、時々、いいようのない感情もあった。

でも今。
私の足は、間違いなく動いた。
もう98%ダメだと言われた足が。
その足が、動いたんだ。

みんなが喜んでくれるそばで
私はベットに埋もれて泣いた。
枕を抱いて、そこに顔を埋めて泣いた。

みんなの前では、絶対に泣かないと決めていた。
泣いても、周りは困るだけ。
はれものに触れるようにされるだけ。
そこに、何も答えなくて
解決の糸口はない。

だから、泣きたい時には
「泣いてくる!!」と、宣言をして、霊安室ロビーに行った。
誰もこないからだ。
そこで、声をあげて泣いた。
目が大きく腫れるまで泣いた。
そうやって、処理したんだ。

だけど、今日は違う。
悲しい涙や、怒りの涙はみせないと誓ったけれど
嬉しい涙はいいよね。
みせたっていいよね。
隠すことなんて、ないよね。

ありがとう。
みんなに、ありがとう。
私に関わってくれたひとみんなに
心からありがとうと思った。
私だけの力では、ここにはこられなかったと思う。

そして。
私は、松葉杖を手にとって。
リハビリ室にダッシュした。
by akiaki2u | 2008-06-24 13:45 | 入院生活
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バスにひかれた元バスガイド 復活迄の日々と今を綴ります