事故について その2いったい何が起こっているのだろう。 あまりの一瞬の出来事に、私は、自分の今を把握することができなかった。 何これ何これ。そしてすぐに、タイヤがグンと動いた。バスの大きなタイヤが動いた。 しかも、私のすぐ横で。 バスの下に入った私だったけど、かろうじて顔や肩は出ていた。 いや、正確にいえば、どの程度出ていたのかはよくわからない。 ただ、やけに視線が低く、アスファルトが近かったのは鮮明だ。 うつぶせに近い体勢だった。手のひらは、地面についてはずだ。 運転手が、全く前方を見ていなかったのだ。 誘導していたガイドのホイッスルも、彼女が私の名前を絶叫したのも 「止まって」とゆう言葉を、悲鳴のように叫び続けていたのも。 運転手には、その何ひとつも聞えていなかったようだ。 車体の頭をふって切り替えて、そしてバックしようとしていたらしい。 最初にバックしていたラインでは、うまく駐車できないと判断しての行為なのだろう。 頭をふった時に、背後から私に追突し、そして切り替えてバック。 そう、私の左足は、そのタイヤとアスファルトに挟まれてしまった。 タイヤよりにあった右足は、とっさにグっとひいたようだ。折り曲げるように。 バスはバックをし始めた。 それでもまだ私は、まるで夢でもみているかのような感覚だった。 私がバスにひきずられている。さっきまでそこをスタスタ歩いていたのに なぜだかわからないけれど、今はバスにひきずられているのだ。 声を出したい。大声で叫びたい。でも、なんでだろう。声がでない。 「止めて」。そう声にしたい。でも出ない。 いったい、どのくらいの距離をひきずられたのだろう。 いや、とてつもなく長い距離ではない。けれど、まるでスローモーションのように その時間が長く、そして遅く感じていた気がする。そんな記憶が残っている。 が、突然。「ふ」と、我に返った。これは夢ではない。夢なんかじゃないんだ。 私は今、大変なことになっているんだ。 そう思えた瞬間、私は悲鳴をあげていた。 どうゆう言葉を発したかはわからない。 でも、何度も何度も。心の底から何度も、私は運転手の名前を叫んだ。 それははっきりと憶えている。 だけれど。バスはすぐには止まってはくれなかった。 私の声も、誘導していたガイドの声も。彼の耳には届いていなかったのだ。
by akiaki2u
| 2007-07-10 01:39
| 受傷
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